雪花伽

たぬきと添い寝したい。

まやかしの月 下2-1

6-1.Sint Praxedis:聖プラクセディス

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『虐殺器官』/『ハーモニー』伊藤計劃〜地獄はここにある。この頭の中に

伊藤氏は、言葉をとても大切にされている方なのだなと感じました。

一文一文を祈るように書いておられるのでしょう。

 

虐殺器官』の主人公はアメリカの暗殺部隊。

世界各地で虐殺が起こり、その虐殺が起こった場所に必ず現れる、ジョン・ポールという男を追います。

 

主人公は暗殺のエリートでありながら、とても普通の感性を持っていることが分かります。

 

その主人公が作中で起こる色々な出来事に圧倒され、絶望し、自棄になり、あのラストを選ぶという過程はまさに闇堕ちというべき。

追う側からいつの間にか追われる側へ。

主人公に感情移入しすぎて呆然としてしまいました。

マジでクラヴィスさま、ピザを食う堕天使……。(しかも強いから誰も倒せる気がしない。)

 

ガチガチのSFと思いきやかなり読みやすくて、どこか現実に起こりそうなリアリティがあるんですね。

SFなのに現代に通じるところがあって、不思議と現代日本的な感性を感じました。

 

タイトルの意味がよく分からないと感じるかもしれませんが、ことばは器官、つまり内臓と同じように進化の過程で今の姿になっているということで、ことばを器官として捉えています。

意味が分かると、確かにこのタイトル以外つけようがないと感じるかもしれません。

 

虐殺器官』が地獄を描いた物語だとしたら、『ハーモニー』は天国を描いた物語であると思います。

 

『ハーモニー』は作中には明記されていないですが、『虐殺器官』から数十年後の未来です。

「大災禍」と呼ばれる、人々が殺し合い、核爆弾が炸裂し、病気と癌が蔓延するという惨劇が起こりました。

ジョン・ポールつみぶかい……。

 

その反省から、人々が公共の資源として管理され、互いが互いを思いやる社会になりました。

つまり、人が個人としてではなく、人間という種族全体として生きる世界です。

 

人々はWatchMeというシステムを体内に入れて、健康状態をチェックされているのですが、

そのシステムがジャックされ、何千人の人々が世界各地で同時に自殺を図るという事件が起きて、という話。

 

『ハーモニー』のラストでは、一瞬天国を見せてくれました。

よく死んだらどうなるという問いで、自他の境界が融けて全てと一体になり、幸せな気持ちになるというのがありますが、そういう死後の世界があれだったんじゃないかと。

 

文章を色で表現するのってどうなのかと思うのですが、

虐殺器官』は死の漂う静謐なペールブルー。血と硝煙のにおい。

『ハーモニー』はひたすら無菌室のようなニュートラルな白で、そこに主人公の深紅のコートが映えます。

 

ジョン・ポールのしたことは正直許されないことだと思っている(自業自得もある)し、主人公も然りです。

あと『ハーモニー』の世界も一見天国なんですけど、自分がなくなるのは果たして幸せなのかな? と思ってしまったりして、

この両極端な二つの世界の間くらいになんとかいられたら、丁度いいのだろうなと思います。

余談ですが、『虐殺器官』というタイトルが物騒すぎて本を親に捨てられた少年がいて、今度は優しいタイトルをつけます、って伊藤氏が言ってるエピソードが面白かったです。 

 

SFの金字塔と言われるだけあって、完成度の高い作品です。

それにしても夭折され、代表作の3冊しか読むことができないというのが悔やまれます。

最後の『屍者の帝国』も大事に読んでいきたいと思います。

 

お疲れ様です。

美術史の話6.5:印象派のひとびと〜ゴッホ編

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ

 オランダの牧師の家に生まれる。一年前に死産した兄と同じ誕生日に生まれたので、同じ名前をつけられた。

 おじが老舗画廊を経営していたので、画商として働いていた。意外と有能だったらしい。

 愛が重すぎて、ろうそくの火で手を炙っている間、娘さんに会わせてくれと好きな女性の家に押しかけたりした。

 その後、伝道活動に励むが激しすぎて破門など色々あって画家に転身。

 生涯に絵が一枚しか売れなかった。

 日本が好きすぎて住みたい。弟テオと一緒に春画を買い漁っていた。

 男女構わず愛に飢えている感じがある。

 

テオドルス・ヴァン・ゴッホ

 ゴッホの弟。

 身体が弱い。兄と同じグーピル画廊に勤めていた。

 かなり先進的な目を持っていたが、保守的な上司との間での軋轢に悩んでいた。

 チョコレートが好きという一面がある。

 

ヨハンナ

 テオの奥さん。

 死後ゴッホの絵を広めるために努力した人。

 

ポール・ゴーギャン

 元々はサラリーマンだったが、画家に転身。

 クズ。奥さんがいるのにタヒチで14歳の少女と結婚したりした。

 顔はいい。  

 

アンリ・ド・トゥールーズロートレック

 名門貴族出身。

 落馬の後遺症で障害者になってしまう。

 ドS。酒好きでカクテルを作って振舞ったりしている。

 ヴィンセントとは親友。彼の絵が侮辱されたときは決闘を申し込んだりした。

 

お疲れ様です。

まやかしの月 下1-3

5-3.Madonna dei Pellegrini:ロレートの聖母

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美術史の話6.5:印象派のひとびと〜ドガとか編

イレール=エドガー・ドガ

 マネと同世代のブルジョワ

 人嫌いで基本的に性格が悪い。

 マネとは気が合い、夫婦の肖像を描いたが、気に入らないといってマネに破かれた。(のちに和解。)

 モネと険悪。 

 

メアリー・カサット

 アメリカ出身のブルジョワ。ドガの弟子。

 ベルトとは同じブルジョワで女流画家だけあって仲良し。

 

カミーユピサロ

 印象派最年長で、モーセと呼ばれ親しまれていた。

 印象派のまとめ役。セザンヌ、スーラ、シニャックにも声をかけたりと面倒見がいい。

 無政府主義者

 

ギュスターヴ・カイユボット

 裕福なブルジョワで、仲間の作品を買ってあげたりしていた。

 ドガと仲が悪い。あと彼の作品は男らしい絵が多い気がする。

 

お疲れ様です。