雪花伽

たぬきと添い寝したい。

ルドン 秘密の花園〜印象派とは同世代

2018.4.14

ルドン 秘密の花園 @三菱一号館美術館

 

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ルドンは特定の主義に属さず、孤高の画家と言われています。(強いて言うなら象徴主義か?)

実は印象派と同世代です。たまに忘れそうになります。

 

ルドンといえば、詩集『悪の華』の挿絵に見られる奇想の怪物たちが有名ですが、

黒一色で描いていました。(シャルル・ボードレールはマネの親友なのでやっぱり同世代)

 

晩年、子供が生まれてからは幸せ一杯で、彼の絵に色彩が溢れ出します。

ルドンの色遣いの巧みさといったら、歴代の画家の中でも屈指のハイセンス。

そのギャップもたまらないですよね。

 

ルドンが若い頃、アルマン・クラヴォーという植物学者の友達がいたとのこと。

 

展示の目玉であるドムシー食堂の装飾絵画を見ていると、

ルドンの描く花って輪郭がぼやっとしていて、のっぺりしていて、

まるでプレパラートの上の細胞や、顕微鏡で見たカラフルな砂粒みたいだなーと思ったのですが、

 

物販にこの絵の柄のキーホルダーが売っているのですが、

丸いのもあってシャーレ感があって、その感じが倍増します。

 

顕微鏡を覗く機会があったのではないでしょうか。

どうだろう。全くの妄想ですが。

 

それにしても、「孤独な幼少期」が引き合いに出されるルドンですが、

いい友達がいたんですね。ルドンに親近感を覚えました。

 

『日本風の花瓶』

着物を着た男の柄が入った花瓶に活けられた花の絵です。

 

モチーフは『紅葉狩』。

モネの『ラ・ジャポネーズ』で妻・カミーユの着物に刺繍されている男と同じ題材です。

 

当時のヨーロッパは日本ブームでした。

印象派は日本の浮世絵の影響を受け、日本風の題材や表現技法をこぞって作品に取り入れました。

 

同世代を生きたルドンもジャポニスムにチャレンジしていたようです。

 

こういう歴史の痕跡みたいなものを見つけるとテンションが上がりますね。

本当に過去にこの人が生きていたんだ、とか、私たちと同じ人だったんだなと感じられます。

人体 神秘への挑戦〜汝自身を知れ

2018.4.14

人体 神秘への挑戦 @国立科学博物館

 

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テーマがテーマなので人が集まるのかな、と思っていましたが、

激混みでした。子供連れも結構います。

みんな人体に興味があるんだなあ。

 

最も身近でありながら、最も謎に満ちた私たちの人体。 

先人たちがいかにしてこの難問に取り組んできたのか、

そして先端技術によって現代はどこまで到達してきたのか、というのが展示のテーマでしょう。

 

前半は模型や標本、解剖学者のスケッチを展示した古典的なアプローチ、

後半はインスタレーションや色鮮やかな電子顕微鏡の写真を展示しています。

 

人体から摘出された本物の臓器の標本(心肺、消化管、脳...etc.)も展示されていましたが、

見たくない人は見なくてもいいよう、壁の向こうに展示するなどの配慮がされていました。

 

面白かったのが、今まで、

 

脳⇄全臓器

 

と、脳が全ての臓器の働きを制御・統率していると考えられていましたが、

最新の研究で、

 

臓器⇄臓器

 

と各々の臓器がメッセージ物質なるものを放出して、お互いの臓器の働きを調節し合っているというのです。

 

そんな体内での会話を再現したメディア・アート作品『人体 NETWORK SYMPHONY』です。

 

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これが、

 

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ニューロンの発火のように光って、他臓器へと情報を伝達します。

 

足元にセンサーがあり、観客の動きに反応してざわざわと臓器が喋る、騒がしくも美しいインタラクション型展示です。

 

「疲れた、しんどい」と連呼する心臓おじさんの声に笑ってしまう。

……休んで。

 

この場合、心臓から放出されたメッセージ物質が血流に乗って、腎臓に届くと、

 

尿量が増える→血液量が減る→血圧が下がる→心臓が楽になる

 

という仕組みだそう。

 

このインスタレーションが見れただけで眼福です。

 

様々なアプローチで人体の謎を解き明かす、といったスタンスの展覧会ですが、

なんだか知れば知るほど人体って難しい、と感じてしまいました。

ハロー・ワールド〜芸術家が描く情報社会の向こう側

2018.4.13

ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて @水戸芸術館

 

芸術は、いわば「危険早期発見装置」である。そのおかげでわれわれは、社会的、精神的危険の兆候をいち早く発見でき、余裕をもってそれに対処する準備をすることが出来るのである。

 

というマーシャル・マクルーハン 著『人間拡張の原理』の一節から着想を得た企画展です。

芸術家という生き物は社会の変化を敏感に感じ取り、その作品に反映します。

 

水戸駅からバスに揺られること数分。

立地的に金沢21世紀美術館を彷彿とさせます。

 

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謎の塔。

水戸芸術館は英訳がART TOWER MITOらしいです。

 

第1室はセシル・B・エヴァンスによる『溢れ出した』

 

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2台のペッパーくんと犬型ロボット、ディスプレイによるインスタレーション作品です。

一応シナリオがあり、3部構成の芝居仕立てになっています。

 

舞台は6本の柱の内側ですが、突然こっちに襲って来ないかと思ってひやひやします。

女の人の音声に合わせて、プログラムされた振り付けをするペッパーくん。

本当に演じているように見えます。

 

英語なので内容はよく理解できませんでしたが、日本語吹き替えがあるとまた違った感想があったかもしれません。

それにしても、作品目録の素材名の欄に”ヒューマノイド”と書かれる時代が来るとは……。

 

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エキソニモの『キス、または二台のモニタ』。

キスをするように向かい合う二つのモニターが展示室に吊られています。

 

モニター上の顔はキスをして恍惚としているように表情を変えますが、

実質はキスをする人の顔を映し出しているだけで、このモニターに何の感情もありません。

でも人は少しでも人間らしく見えれば、プログラムで動くモノに対して人格を見出すことができます。

 

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『I randomly Love you/Hate You』

 SNSやメッセージアプリを彷彿とさせるレイアウト上で、

I ( ) Love YouとI ( ) Hate Youの( )にランダムな副詞を入れた文章が生成されます。

 

このような単純なプログラムによって生まれる言葉にさえ感情を左右され、すぐ動揺してしまうほど、人間の心とは単純でそして繊細なものです。

 

レイチェル・マクリーンの『大切なのは中身』も、SNS女王の栄光と失墜を描いた作品でした。

同展覧会では、情報が人の精神に与える影響について、警鐘を鳴らす作品が多く見うけられました。

 

他には、画像編集の技術をテーマにしたデヴィッド・ブランディやヒト・シュタイエルの作品。

高度な画像編集技術によって作られた画像が容易に人を騙し、世論を動かしてしまう可能性を示唆しています。

 

いつのまにか人類は、とんでもなく大きなものを手にしてしまっていたようです。

エモーショナルな人間と、淡々としたプログラムとの落差に呆然としてしまいました。

 

高度な人工知能、そして技術を悪用する人々と闘うには、人間はあまりにも優しくて脆すぎます。

いくら技術が進んでも、人の心が弱いままでは不幸な未来しかない。

そんなメッセージを受け取ったような気がします。

 

・参考文献

水戸芸術館|美術|ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて

現代美術に魅せられて〜文化の神殿に礼拝へ

2018.4.13

現代美術に魅せられて-原俊夫による原美術館コレクション展 @原美術館

 

美術館に行くときの心持ちって、京都の神社に行くのに似ています。

それなりに心と装備の準備が必要です。

 

それは色々な自由が拘束される稀有な空間だからではないでしょうか。

水を飲んではいけないとか、ボールペンじゃなくて鉛筆を使えとか。

ここでは人よりもモノが偉いのです。

 

教会が宗教的神殿なら、美術館は文化的神殿である。と書いているのを読んだことがあります。

 

神社で鳥居から本殿まではるばる歩かされるのは、

非日常的な空間に誘われ、神前に相応しい清浄な気持ちに整えるため。

 

そういうわけで、品川駅・高輪口から15分ほどとことこ歩きます。

 

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原美術館は、昭和モダンな家が立ち並ぶ御殿山の閑静な住宅街にあります。

今回の展覧会は、原館長自らがキュレーションする初のコレクション展だそうです。

 

ところで原美術館、館内は撮影禁止になっていました。

SNSの普及からでしょうか。

 

SNSと美術館の関係は個人的に興味深いトピックであります。

 

実は西欧の美術館は作品の写真撮影がOKなところが多いそうです。

果ては展示室内で模写可など。印象派の画家もルーブル美術館の絵を模写して勉強したとかいうエピソードが残っています。(今はどうか分かりませんが!)

 

日本みたいに公共の美術館で作品の写真撮影が禁止されているのは珍しいことなのです。

(常設展として自館で作品を所蔵している海外の美術館と、企画展の貸し借りが多い日本の美術館とで、どうしても後者は権利問題がややこしくなるからか?)

 

ところがSNSが流行り出してから、その宣伝効果に着目したのか、撮影OKむしろ拡散してね! という展覧会が増えてきました。

(ex.森村泰昌展、N.S.ハルシャ展、レアンドロ・エルリッヒ展)

 

ヴァルター・ベンヤミンの『複製技術時代の芸術』という論文では、

写真などの複製技術の発展により、作品の礼拝的価値よりも展示的価値が大きくなった、と述べています。

 

作品に何が描かれているかという画像は、下手をすればネットに転がっていたりします。

それでも美術館に何をしに行くかと言えば、作品に礼拝しに来ているんですよね。

 

高い交通費と入場料を払って、よく分かりもしない現代美術を見て首をひねる。

それでも美術館巡りを止められない自分は、我ながらマゾだなと思います。

 

閑話休題

 

まずは館内のカフェ・ダールへ。

 

展覧会や作品をモチーフにしたイメージケーキをいただきます。

写真がないので言葉を尽くしますが、

小さいシュー生地とあんずが乗ったチョコレートムースでした。

 

カフェラテもふわっふわの泡が乗っていて、それを煙水晶のようなざらめのついた、おしゃれなマドラーで混ぜながら飲みます。

 

広い庭を眺めながらお茶をする贅沢な時間。

ここ、本当にビジネス街の品川なのか?

 

廊下の曲面の壁に作品が飾ってあって、こういう風に作品と暮らす生活っていいなと思いました。

他にも、トイレやパイプスペースとして使われていた場所の特性を生かした作品を展示していて面白かったです。

 

おしゃれな空間で飲む、おしゃれなコーヒーが美味しく感じられるように、

その空間にふさわしい作品を飾ると、いい相乗効果を得られる場合があります。

 

今回、写真はありませんが、それは実際行ってみてのお楽しみ、ということでぜひ足を運んでみてほしいです。

品川駅から徒歩圏と、交通の便も良いと思います。

創作小説

創作小説の管理を一本化するべく、

当ブログから「小説家になろう」さま、「カクヨム」さまに移転しましたので、

リンクとあらすじをまとめました。

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